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団員リレーエッセイ弁護士の声

一患者として思うこと

弁護士 長 尾 詩 子

2006年12月に出産をして、今、2歳の男の子のママです。

小柄のためそう見えないらしいのですが、そこいらの男性弁護士よりも体力があり、医療過誤事件を扱いながらも、出産するまでは全く医療機関とは縁のない健康優良児の私でした。

しかし、子ども(以下、「おちび」といいます)ができて、医療機関のありがたさを感じる生活に一変しました。

「お熱が出ました!」。仕事中に突然かかってくる保育園からの電話。すべての思考がとまり、頭の中が真っ白になる。とにかくスケジュールを調整して、あたふたとお迎えに行く。

真っ赤な顔の苦しそうなおちびを抱えて、「ごめんね。『どうして、今、熱を出すのよ!』なんて思ったママを許してね。」とつぶやきながら、小児科に飛び込む。

2歳の子は自分で自分の症状を訴えられない。だからこそ、じっくりと先生に診てもらいたい。聴診器をあてられるだけでこの世の終わりがきたかのように泣き叫ぶおちび。暴れるおちびをだっこしながら、はらはらする。そこに、ドクターに「大丈夫ですよ。」と言ってもらって、肩の荷が降りて、ほっとする。

最近でこそ、おちびにも私にも「免疫」がついてきて多少のことでは騒がなくなってきたけれど、小児科のドクターのありがたさを思っています。

そんな中でも、一患者として、もっと医療体制を充実してほしいと思うこともありました。

おちびが生後5か月のころ、私がベビーベッドの柵を上げ忘れてしまって、ベッドから落ちたことがありました。畳においたクッションの上に落ちたのだけれど、火がついたように泣き始め、全く泣きやまない。

初めてのことに動転してしまい、とにかく震える手で、区が指定する夜間診療機関の問い合わせ先に電話をかけて状況を説明し、どこの病院に連れて行ったらいいか聞く。なのに、「●●病院脳外科は手術中だから今行っても朝まで待ちます。●●病院は脳外科はないから・・・」と、結局、どこに行ったらいいか教えてくれない。こんなに大泣きして泣きやまないのに、この東京で病院に連れて行くことができないなんて・・・同じ経験のあるママ・パパであればみなさん同じだと思うのですが、「こんなことをしている間に取り返しのつかないことになったらどうしよう。」と、本当に怖く、また親として情けない気持ちになりました。

結局、近隣の大学病院の緊急外来におしかけて、別の近くの病院を探していただき、事なきを得たのですが、あの恐ろしい思いは忘れることができません。

一患者として安心して安全な医療が受けられるようにーその思いを大事にしながら、医療過誤事件に取り組んでいきたいと思います。

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