医療問題弁護団40周年記念シンポジウム雑感

弁護士 飯塚 知行

10月28日(土)、医療問題弁護団設立40周年の記念シンポジウムが開催されました。医療従事者、医療事故被害者、患者側弁護士、医療側弁護士、ジャーナリスト等々各方面から多数の参加者を得て、主として、医療安全という切り口で医療現場の現代的課題について報告と意見交換が交わされました。

医療が高度化・分業化し続ける現代の医療現場において、患者が安全で適切な医療を受けるためには何が必要か?事故防止のためのチェックシステムの整備、医師・医療従事者の労働環境の改善、医療安全につながる大学教育や生涯教育の整備、医療安全の意識の醸成など様々な課題が浮き彫りになりました。

その詳しい内容は、改めてホームページなどで報告される予定です。

ところで、ここでは少し視点を変え経済的観点から考えてみます。上記の如き医療安全を実現するためには、相当の社会資本や、医療機関も自ら予算を投入しなければならず、そこには低くはないコストの壁もあることがしばしば指摘されます。しかし、近時の某自動車会社や、某鉄鋼会社、某電機会社など枚挙に暇のない負の事件を挙げるまでもなく、事件や事故による有形・無形の大きな損失を予防するために予算を使うことは、バランスシート的にも売上という利益を挙げるのと同等以上のメリットがあるとも指摘されています。

この点についての意識改革も望まれます。

何れにしても、医療安全のためには、ある意味で、患者も医療機関も各代理人弁護士も同じ方向に向かって進んでいくことが大切な時代に入ってきていることを痛切に感じさせるシンポジウムでした。

プレスリリース欄に、品川美容外科の「糸によるフェイスリフト術」和解成立のご報告を載せました。

下記リンクをご覧ください(新しいタブが開きます)。

1月21日(日)16:00~17:00 署名活動を御茶ノ水駅 聖橋口改札前で行いました

公正な医療事故調査制度の確立を求めて チラシ配布・署名活動を 次の日時・場所で,行いました。

<第97弾>2018年1月21日(日)16:00~17:00

場所 JR中央線・総武線 御茶ノ水駅 聖橋口改札前

東京三弁護士会医療関係事件検討協議会が開催されました

東京三弁護士会医療関係事件検討協議会が開催されました(団員が委員として参加)

品川美容外科の「糸によるフェイスリフト術」和解成立のご報告

品川美容外科糸リフト被害対策弁護団

2013年10月、医療問題弁護団は、美容医療の施術による健康被害の実態を把握するとともに、被害の救済を行うことを目的として、美容医療に関する電話無料相談を行いました。当初は、様々な相談が寄せられることを想定していましたが、74件の相談総数のうち、実にその3分の1に当たる24件が品川美容外科・品川スキンクリニック(医療法人社団翔友会)による「切らないフェイスリフト」と称する吸収糸リフト(商品名「小顔エンジェルリフト」「ロイヤルリフト」「夢のリフト」等)に関する相談でした。

そこで、2013年12月、被害調査と被害救済のために、医療問題弁護団を母体として、「品川美容外科糸リフト被害対策弁護団」を結成し、下記のとおり、民事損害賠償請求訴訟を提起し(原告数合計75名)、併せて行政機関への要請活動等を行ってきました。

本日、民事訴訟において、被告との間で和解が成立しましたので、ご報告します。
※吸収糸リフト=特殊加工された糸を特殊な針を使って皮下組織に埋め込む手術で、それによって、皮下組織でたるみを持ち上げる施術方法がとられる。

1 相談者の訴えの概要

弁護団に寄せられた相談によると、品川美容外科・品川スキンクリニックにおいて、強引な勧誘がなされ、施術の効果持続期間や合併症についての十分な説明を行わないまま、吸収糸リフト術が実施され、リフトアップの効果がほとんど見られなかったのみならず、側頭部や顔面の疼痛・皮膚の引き攣れ・脱毛といった健康被害が生じた。
2 損害賠償請求訴訟

(1)提訴後の経緯2014年4月23日 第1次提訴(請求額約2400万円。民事14部に係属)(20代~50代の女性13名。関東近辺在住)
2014年10月30日 第2次提訴(請求額約8600万円。民事14部に係属)(20代~60代。女性37名、男性3名。ほぼ全員が関東近辺在住)
2015年5月26日 第3次提訴(請求額約4600万円。民事30部に係属)(20代~70代。女性19名、男性1名。ほぼ全員が関東近辺在住)
その後、翔友会が施術代金請求訴訟を提起し、損害賠償請求の反訴を提起(2名)
2016年4月~6月 証人尋問(被告クリニック医師6名)、本人尋問(第1次原告全員)
2017年12月6日 全員について和解成立

(2)訴訟の争点①  効果の程度及び持続期間、合併症についての説明義務違反②  既払いの手術代金について消費者契約法による取消、錯誤無効

(3)和解条項①  和解金額口外禁止条項を入れています。(非開示)②  再発防止条項等本件の解決に当たり、原告団・弁護団としては、損害賠償だけでなく、本件紛争を糧として同種被害の再発防止に向けた取組みを求めてきました。その結果、以下の条項が入りました。
ア 遺憾の意を示す条項「被告は、本件紛争の発生及び経過を重く受け止め、原告らに対し、遺憾の意を表する。」
イ 再発防止条項「被告は、被告の医院における説明内容(特に、施術の内容・方法や効果の点)について原告らから問題点を指摘されたことを真摯に受け止め、改めて、患者の自己決定の前提となる必要十分な説明及びこれに基づいて熟慮した患者の自己決定を尊重することの重要性に思いを致し、より良い医療の提供に努めることを約する。」
3 行政要請活動

(1)これまでの活動厚生労働大臣・消費者庁内閣府特命担当大臣宛てに要望書提出・担当者面談品川美容外科・スキンクリニックが所在する区の保健所訪問・監督要請

(2)2017年12月6日の和解を踏まえた厚生労働省への要請厚生労働省への要請書(PDF版)・美容医療に関するインフォームド・コンセントの実現にむけた整備・健康被害等に対する対策・監視監督機能の実効性確保・消費者教育の実施
4 学会等への要請活動学会等への要請書(PDF版)

(1)2017年12月6日の和解を踏まえ、次の各団体に要請を行いました。公益社団法人 日本美容医療協会一般社団法人 日本美容外科学会(JSAPS)一般社団法人 日本美容外科学会(JSAS)一般社団法人 日本美容皮膚科学会

(2)要請の趣旨・インフォームド・コンセントについての指導、周知・ホームページ広告についての法令遵守の徹底、周知等
5 相談窓口

今後の被害相談については、医療問題弁護団の事務局でお受けします。

基礎研修(訴訟編)を開催しました

平成29年11月30日、細川大輔団員を講師として、基礎研修(訴訟編)を開催しました。

 

細川団員作成の訴状等の資料を配布していただいた上で、訴状の作成のポイント、機序の特定の重要性、集中証拠調べを見据えた上での争点整理のポイント等、細川団員の豊富なご経験に基づきご講義いただき、大変好評を得ました。