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団員リレーエッセイ弁護士の声

より良い医療を目指す弁護活動

弁護士 山本 悠一

1 ある医療事故相談にて

その日、事務所の法律相談に訪れた初老の男性は、私が相談室に入室するや否や、自身が通う病院や担当医師の対応・説明への不満を滔々と語り始めました。曰く、10年以上前から人工透析をしているその男性は、透析時の医師の態度や説明、看護師等医療従事者の言動について、大小様々な不満をお持ちであり、透析先の病院を転々としているとのことでした。そして、話を聞くにつれて分かったことは、そのような不満が生じたのは、どうやら初めて透析を受け始めた際に医師から十分な説明がなかったことに原因があったようでした。

相談を担当した私は、ふと「医療者と患者の対話」という言葉を思い出しました。昨今、医療現場では「対話」が必要とされており、「対話」するということは患者と医療者が対等な立場でお互いの考えを深く理解できるように関係性を構築することであるといいます。しかし、患者が抱える疑問や不安を、患者自身が医療者に対して適切な形で伝えることは、伝える術を持たない者にとっては相当困難であることは間違いなく、医療者との間でコミュニケーションが不十分なため、医療者に対して不満を持つことになることは十分にありうると思います。医療者に患者の思いを伝えることも私たちの役割ではないかと身にしみて感じました。

2 尊敬すべき医師との出会い

そんな私も、弁護士10年目となり、多くの医療事故被害に関する相談や事件を担当させていただきました。先日も、現在担当中の医療過誤調査事件について、知人の医師を訪問し、意見を聞いてきました。知人医師は、当該事件の問題点、一般的な医療水準の説明に加えて、一人の医師としてあるべき対応が何かなどを細かく丁寧に説明してくださり、医療には素人の私にも分かりやすく教えてくださりました。私たち患者側弁護士の弁護活動が、このような心ある医療者の協力なくして成り立たないものであることは周知のとおりです。

私が事件調査を通じて出会った協力医の先生方は、みな真摯に、より良い医療の実現を目指して尽力されている方ばかりです。死亡原因を明らかにするために、福岡まで医師の見解を確認しに行ったことがありますが、その医師は小児科医として、医療者側、被害者側の双方の立場で多くの意見を述べておられます。ひとえに、より良い医療の実現を目指しているからこそ、患者側、医療側といった枠に止まらない活動が実践されているのだと思います。

また、医療事故によりご長男を亡くされた方からお話を聞く機会がありましたが、その方は、ご家族の医療事故をきっかけに、「うそをつかない」「情報を開示する」「ミスがあれば謝罪する」の三原則を制度として根付かせることを目指し、患者・家族と医療者の対話を進められています。失意のどん底にあったその方を現在の活動に向かわせたのも、心ある医療者の理解であったといいます。医療事故被害者を救うのが、これもまた医師であったことに驚きました。

3 より良い医療を目指す弁護活動

この10年間、先輩弁護士の方々から、様々な場面において、「患者・家族を支援する弁護士と医療者を支援する弁護士のいずれについても、安全で、より良い医療の実現を目指す一員であることに変わりはない」ということを教えていただきました。弁護士10年目の今、改めて、患者側対医療側という構図に無用に与することなく、医療問題弁護団の理念である「より良い医療の実現」を目指して、真摯に活動していきたいと思いました。

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