団員リレーエッセイ弁護士の声
お母さんの仰る通り(水口瑛葉)
「お母さんの仰る通り」、これは、私の息子のかかりつけの小児科の医師の口癖です。
2歳になる息子は、喘息発作が時々起きるため、定期的に小児科を受診しています。
主治医の先生は、私が子どもの症状や前回診療からの経過などを説明したり、質問したりすると、決まって「お母さんが仰るように」、と枕詞をつけて説明されます。
最近は元気で発作もありませんでした、と報告すると、「お母さんの仰るように、胸の音も綺麗ですし、元気そうですね。」という具合です。
質問しやすい、話しやすい雰囲気作りのために意図的にそのようにお話されているのだと思います。
皆さんは、医療機関を受診したとき、不安に思うことや疑問に思うことについて、きちんと質問することができていますか?なかなか聞きたいことを聞けないという方も多いのではないでしょうか。
私自身、先生忙しそうだし、まあいっかあ・・・・と聞かなかったり、「質問はありますか?」と聞かれても、なんとなくスッキリはしていないけれど、とっさに「大丈夫です。」と言ってしまい、帰り道で、やっぱり、あれを聞けばよかった・・・と思った経験があります。
医師は多忙で、1人の診察に多くの時間を割けないので、患者側もどうしても遠慮してしまったり、こんなこと聞いていいのかしら、と思ってしまいがちです。医師側も、医師にとっては常識であるため、患者がそんなことを疑問に思っているなんて思いもしないということもあるかもしれません。
私は、まあいっかあ・・・や、とっさの「大丈夫です。」を避けるために、事前に可能な限り聞きたいことや聞きたくなりそうなことを考えておいて、これを聞く!とミッションを決めて医療機関を受診しています。
医師とのコミュニケーションがうまくいけば、より適切な診療が受けられる可能性が高まりますし、トラブルが起きるリスクが減るので、結局は医師と患者双方にとって良好な結果になると思います。
質問した際に、医師がきちんと答えてくれることがわかれば、さらに納得してその医師から治療を受けられるはずです。もちろん、その逆もあるかもしれませんが・・・。
医療過誤として紛争になる事件も、コミュニケーションさえうまくとれていれば、ここまでの結果にならなかったとか、結果は変わらずともこれほど激しい紛争にならなかったのにというものも少なくありません。
そして、私はこれを書きながら、私自身の仕事のことを考えています。
私も、依頼者の方に説明し終わった後に「何か分からないことや、質問はありますか?」と聞くことがありますが、「ありません」とか「大丈夫です」と言われても、実は質問しづらいだけということもあるかもしれないなあ・・・・。
息子のかかりつけ医の医師を見習って、質問しやすい雰囲気作り、心がけたいと思っています。
以上