公正な医療事故調査制度の確立を求めて チラシ配布・署名活動を 次の日時・場所で,行いました。
<第122弾>2020年9月19日(土)17:30~18:30
場所 JR総武線 水道橋駅 東口
公正な医療事故調査制度の確立を求めて チラシ配布・署名活動を 次の日時・場所で,行いました。
<第122弾>2020年9月19日(土)17:30~18:30
場所 JR総武線 水道橋駅 東口
私は、弁護士3年目から、医療事件に取り組むようになりました。それから、16年間、医療事件に関わってきました。これまで関わった医療事件を思い出してみると、それぞれに思い出があります。ただ、やはり一番印象に残るのは、初めて経験した案件です。
私が初めて経験した案件は、悪性腫瘍の見落としにより患者が亡くなったというケースでした。
血尿や排尿痛、下腹部痛を自覚した患者さんは、A病院を受診しました。膀胱鏡検査で膀胱内に直径5ミリ程の腫瘍が発見されたものの、その後に行なわれた細胞組織検査の結果、同腫瘍は悪性ではないと診断されました。
その後、患者さんは、A病院とは別のB病院を訪れ、泌尿器科担当医師の診察を受けます。そこで膀胱鏡検査を受けたところ、膀胱頂部に浮腫が認められましたが、B病院の担当医師は、肉眼的所見にて悪性腫瘍とは認められないこと、及び、A病院での細胞組織検査で悪性腫瘍の所見が認められないとされていたこと等を理由に、更なる細胞組織検査、腹部超音波検査、CTやMRIによる画像診断等を行なわないまま、悪性腫瘍ではないと判断し、慢性前立腺炎と診断しました。
ところが、患者さんが数ヶ月後にさらに別の病院で膀胱鏡検査と腹部超音波検査を受けたところ、患者さんは尿膜管がんであると診断されたのです。この時点で患者さんの尿膜管がんは既に相当程度の進行状態にあったため、その後の治療も虚しく、患者さんは、亡くなってしまいました。
亡くなられた患者さんのご遺族から相談を受けた際、私は、そもそも「尿膜管」というものの存在すら知りませんでした。「尿膜管」とは、臍と膀胱頂部にそれぞれ端を持つ索状物です。しかし、私は、自分の臍と膀胱をつなぐ管が体に残っているということなど、微塵も考えたことはなく、ましてや、そこに悪性腫瘍が発生するなどという話は聞いたこともありませんでした。当然、まずは、尿膜管とは何か、尿膜管はどのような場所にあるのか、尿膜管に悪性腫瘍が生じた場合はどのような症状を呈するとされているのかなどについての文献を調べるところから始まりました。
そして、先輩弁護士の意見やアドバイスを聞きつつ、四苦八苦しながらカルテを読み、医学文献による調査・検討を行った上で、「尿膜管がんの可能性も念頭においた上で患者に対して膀胱鏡検査や腹部超音波検査、CT、MRI等の検査を十分かつ速やかに行い、尿膜管がんであることが判明した場合には、切除手術等適切かつ最善の治療を行なう注意義務があったにもかかわらず、これを怠った過失が担当医にはある」として、私たちはご遺族の代理人として、B病院に対して訴訟を提起するに至りました。
こちらの主張に対して、B病院は、患者さんの膀胱頂部の変化には、固形がんや乳頭がんを疑わせる所見や出血がなかった、前立腺生検の結果悪性所見が認められなかった等として、過失を争いました。
B病院の担当医は、医師尋問においても過失が無いとの主張を堅持していましたが、その後に実施された鑑定の結果、B病院の担当医は、患者さんの膀胱頂部に浮腫を確認した時点で、X線CTやMRIの画像診断や膀胱病変部深部層からの組織採取による生検を行うべきであったとされました。
そして、提訴後約1年半後に、同案件は勝訴的和解にて終了しました。
初めて経験した医療事件に対する感想は、正直、「大変」の一言でした。疾患の内容や特徴も分からない。その疾患に対する治療方法がどのようなものであるかも分からない。そもそも、疾患が存する器官の位置関係や機能すらも分からない。カルテに記載された略語の意味も分からない…。
そのような状態の中で、とにかく、地道に文献を調べ、時間をかけてカルテを検討し、自分なりの考えをまとめた上で先輩のご意見をいただきながら、何とか事件を進めていったという感覚でした。医師尋問では、長い時間をかけて質問事項を考えて尋問に臨んだものの、あっけなく医師からの反論に遭い、結局は先輩弁護士のフォローによって助けられるという状態でした。
それでも、解決に至った後、患者さんのご遺族から、「ありがとうございました。」と言われた際の喜びは、ひとしおでした。「医療事件は大変だけど、自分なりに頑張って良かった。」・・・その時の気持ちは、今でも忘れません。
その後も、いろいろな医療事件を経験しましたが、「医療事件とは、時間と労力がとてもかかる。」という印象は、全く変わっていません。医療事件に何件関わっても、それぞれの事件で、知らないことばかりです。私などまだまだ未熟者ですが、これからまた多くの事件に関わったとしても、きっと同じ感覚なのではないかと思っています。でも、その分やりがいも大きい。この思いも、全く変わりません。
特に、相手方の病院の過失責任を裏付けられそうな医学文献やカルテの記載等に行き着いた際の「これだ!」という感覚は、なかなか他の種類の事件では味わえません。また何より、事件が解決した時に依頼者の方からいただくお言葉や安心した表情に、それまでの大変な思いが報われます。
特に若手の弁護士の方は、「医療事件には興味あるけど、医療のことが全然分からないのが不安だし、大変そうで・・・」と少し気後れしてしまうかもしれませんが、是非、勇気をもって取り組んでいただきたいと思います。医学的なことがよく分からないのは、多少経験を積んでもあまり変わらないので、事件ごとに取り組むしかありません。そのことに不安を覚えるよりも、大変さの中にきっとある「やりがい」を感じて欲しいと思います。
少し偉そうなことを書いてしまいましたが、私自身、まだまだ「ひよっこ」の感覚です。これからも、多くの医療事件に取り組める機会がいただければありがたいことだと感じています。
以 上
「包茎手術被害対策弁護団」が担当した、男性器の治療(包茎手術、亀頭増大術等)を実施するクリニックに対する、包茎手術や亀頭増大術などの手術に関して、手術の合併症や効果に関する説明が欠落したこと等を理由として損害賠償を求めて提訴した民事訴訟において和解が成立しました。
(包茎手術被害対策弁護団 団員 弁護士 鹿島 裕輔)
男性器の治療(包茎手術、亀頭増大術等)を実施するクリニックにおいて、包茎手術及びそれに伴い勧められた亀頭増大術などの手術に関して、手術の合併症や効果に関する説明が欠落し、かつ効果に関する説明が事実に反していたとして、手術を受けた患者が損害賠償を求めて提訴した事件です。
平成28年6月23日 国民生活センターによる発表「美容医療サービスにみる包茎手術の問題点」※1
平成28年6月26日 当弁護団によるホットライン実施※2
平成30年2月7日 提訴
平成31年3月27日 和解成立
※1 http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20160623_2.html
※2 ホットライン当日の相談件数は55件
2020年6月26日時点での電話相談件数は62件
① 本件において、患者が受けた亀頭増大術で使用されたヒアルロン酸は、吸収性の物質であるため、当該物質を注入することで一時的に大きさに変化があったとしても、その持続期間は平均して6ヶ月から1年間とされており、少なくともその効果が永久的に持続することはない。
そのため、医師は、診療契約を締結するにあたり、患者に対し、かかる手術による効果(利害得失)として、「ヒアルロン酸は吸収性の物質であるため、当該物質を注入することで一時的に大きさに変化があったとしても、その持続期間は平均して6ヶ月から1年間とされており、少なくともその効果が永久的に持続することはない」旨を丁寧に説明すべきであり、かつ患者が本件亀頭増大術の効果を正しく理解し、納得した上で診療契約を締結することができるよう即日施術の回避を含めて熟慮の機会を確保すべき義務があった。
にもかかわらず、医師は、患者に対して、当該医院で使用しているヒアルロン酸を注入することにより効果が長期間持続するかのように患者を誤診させる説明を行った。
② ヒアルロン酸の注入にあたっては、紅斑・発赤、浮腫・腫脹、疼痛、紫斑、皮膚壊死やアレルギー、炎症反応などの合併症や副作用が生じる危険性がある。
そのため、医師は、診療契約を締結するにあたり、患者に対し、「手術に付随する危険性」として、紅斑・発赤、浮腫・腫脹、疼痛、紫斑、皮膚壊死やアレルギー、炎症反応などの合併症や副作用の発症の可能性やその危険性について丁寧に説明すべきであり、かつ患者が本件亀頭増大術の危険性を正しく理解し、納得した上で診療契約を締結することができるよう即日施術の回避を含めて熟慮の機会を確保すべき義務があった。
にもかかわらず、医師は、患者に対して、上記合併症や副作用について説明しなかった。
③ 男性器へのヒアルロン酸注入は医学的に一般に承認されている使用方法ではないため、医師は、本件診療契約を締結するにあたり、患者に対し、本件亀頭増大術が医学的に一般に承認されていない施術であることを説明すべき義務があった。
にもかかわらず、医師は、患者に対して、本件亀頭増大術が医学的に一般に承認されていない施術であることを説明しなかった。
以下の内容を含む和解が成立しました(守秘条項がありますので、以下の限りで公表します。)。
(1)被告が、原告に対して、解決金を支払うこと
(2)被告は、患者に対して、施術に関する一般的な説明に加え「ヒアルロン酸の持続期間に関する当院の説明は、当院の医師のこれまでの医学的な経験に基づくものであり、持続期間を保証するものではない。」旨の説明を行い、これを書面等で確認することを約すること
(3)被告は、患者が来院時に希望した施術以外の施術(いわゆるトッピングやオプションを含む)を勧める場合、特に適切に費用対効果を吟味できる熟慮期間を設けることを約すること
包茎手術を始めとする自由診療領域においては、不必要な手術を勧められ、資力が少ないにも関わらず高額な契約を締結することがある等の問題点があります。医療の安全性やインフォームド・コンセントなど患者の権利が大きく損なわれていると同時に、消費者被害としての側面も大きく、このような種類の被害は「医療消費者被害」と呼ぶべきものです。また、包茎手術に関して言えば、羞恥心などから被害を受けていても声をあげにくいという実態もうかがわれます。
弁護団としましては、他の自由診療領域に関する被害救済に取り組む関連弁護団と連携するなどして、引き続き自由診療領域における医療消費者被害の再発防止に取り組んでいく所存です。
他にも包茎手術などの美容医療による被害に悩んでいる方が多くいらっしゃると思いますので、包茎手術により痛みや後遺症が生じた、高額な手術・不要な手術を強く迫られたなどの被害に遭われた方は、下記の医療問題弁護団窓口までご相談ください。
医療問題弁護団 電話番号:03-6909-7680