医療問題弁護団は、2021年2月1日、感染症法の改正により、新型コロナウイルス感染症の患者・感染者が入院措置に反したり、積極的疫学調査・検査を拒否したり、虚偽の内容を答えたりした場合の処罰規定(過料)を設けることに強く反対する再度の意見書を、内閣総理大臣、厚生労働大臣、各政党に対して提出をしました。
2021年2月1日
内閣総理大臣 菅義偉 殿
厚生労働大臣 田村憲久 殿
医 療 問 題 弁 護 団
代表 弁護士 安 原 幸 彦
(事務局)東京都板橋区徳丸3-2-18
まつどビル202 きのした法律事務所内
電話 03-6909-7680 FAX 03-6909-7683
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感染症法改正に関する再度の意見書
医療問題弁護団は、医療被害の救済、医療事故再発防止、患者の権利確立、安全で良質な医療の確立等を目的とする東京を中心とした患者側弁護士約230名の団体です。
当弁護団は、1月20日付「感染症法改正に関する意見書」(以下「意見書」といいます。)において、感染症法改正により患者・感染者を処罰の対象とした処罰規定を設けることに強く反対する意見を表明しました。同様の意見は、他の多数の団体からも発出されております。
その後の報道によると、感染症法改正につき、刑事罰の規定を削除して、行政罰である過料とする方向で自由民主党と立憲民主党が合意したとされています。
しかし、処罰規定が刑事罰であろうと行政罰であろうと同じことです。その理由は、意見書にも述べたとおり、罰則による入院の強制という強力な人権制約を正当化する根拠となるような事実は存在しないこと、罰則を設けることは、感染者に対する差別・偏見を助長し、感染症法の趣旨に反する上に、かえって検査を受けない等の行動を誘発して感染症蔓延防止を困難にしてしまうことにあります。
以上より、当弁護団は、重ねて、患者・感染者を対象として行政罰を科す規定を設けることに、強く反対します。
前述のような行政罰を設ける方針に対し、すでに他団体も重ねて反対の意見を述べたり、述べる準備をしていると側聞しています。このうち、ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会は、長年にわたってハンセン病隔離政策による人権侵害に苦しんできた同会の方々を参考人として国会に呼んで、国会で、この問題に関する意見を述べることを要望しています。当弁護団としても、感染症法改正の議論においては、法律が作り出した人権侵害及び差別・偏見が存在すること、これに苦しんできた人々の存在と苦しみの実態を知っていただくことが重要かつ必須であると考えます。
以上より、諸団体から表明されている反対意見及びハンセン病隔離政策の被害者等の当事者の言葉を真摯に受け止め、感染症法改正案より、患者・感染者に対する処罰規定をすべて削除されるよう、改めて求める次第です。
以上