団員リレーエッセイ弁護士の声
医療事件に育てられて(青野 博晃)
弁護士になって、もうすぐ11年目が終わろうとしています。
弁護士の業界では、年次を経るごとに、若手、中堅、ベテランと呼ばれるのですが、私もそろそろ中堅と呼ばれる世代です。
現在、弁護士の多くは、大学や法科大学院を出て司法試験に合格し、司法修習という研修を経て、弁護士になります。
言い方を変えると、学校と司法修習で基礎的な法律と実務のほんの一部を学んだだけで、弁護士「先生」と呼ばれる存在になってしまいます(個人的には「先生」という呼称は好きではありませんが、それはさておき)。
そのため、多くの弁護士にとって、実際に仕事をする中で経験を積むことが重要になり、先輩弁護士と一緒に事件に携わり、「事件に育てられる」ことで成長していきます。
そして、医療という専門性の高い分野を扱う弁護士を志した私のこれまでは、医療問題弁護団の活動を通して、先輩弁護士とご相談者・ご依頼者に育てられたと思っています。
医療問題弁護団では、医療被害に遭われた患者さんやそのご家族からのご相談やご依頼をお受けしますが、常に、弁護士2名以上の体制で事案にあたり、若手弁護士は、先輩弁護士とペアを組みます。
専門性の高い医学的知識を学んで理解し、法律という異なる専門分野において使いこなすためには、真摯な勉強と経験が必須です。
そのため若手弁護士は、ペアになった先輩弁護士との議論を通して知識や考え方を深めます。
また、医療問題弁護団では、団員の受けたご相談やご依頼について、必要に応じて団内の少人数のグループで、協力医の意見を受けつつ討議し(勿論、相談者や依頼者のプライバシーには最大限に配慮します。)、多角的な検討をしています。
また、ご相談者・ご依頼者から被害についての訴えや想いなどをお話しいただき、被害を理解できるよう努めます。
その中では、あるべき患者側弁護士としての姿勢などを学ばせていただくことも多くあります。
中堅に差し掛かるにあたって振り返ったとき、私も、医療問題弁護団の多くの先輩方と一緒に医療事件に接することで、成長できていることを改めて実感します。
医学文献の読み方や理解の仕方を教えてもらったり、議論をしながら自分の理解の浅さを痛感したり、裁判所に提出する予定の書面を跡形もなく直されたりしながらも、医療問題弁護団の活動を通して、先輩弁護士の仕事を見て学ぶことが多くありました。
また、ご依頼者の方にも、被害の辛さなどをお話しいただき、ときには叱咤いただきながらも、弁護士としてその想いにどうしたら応えられるかを考える機会をいただきました。
医療問題弁護団では、先輩が後輩を育て、ご相談者・ご依頼者に学びをいただいて、専門性を持つ患者側弁護士を育てることも活動の大きな柱だと思っています。
中堅に差し掛かった私もまだ先輩から学ぶことは多いですが、一方で若手を育てる側に回らなければなりません。
そのような学びの連鎖が、弁護団にご相談・ご依頼いただく患者さんやご家族のお役に立てたらと思い、医療問題弁護団の活動に携わっています。
以 上