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協力医の意見聴取について(森 孝博)

 医療事件は、専門性が高く、法律相談だけで病院側の法的責任の有無を判断できることはあまりありません。そのため、基本的にまず法的責任の有無を判定するための調査手続を経ることになり、カルテ等を入手・分析し、医学文献を調査します。近頃は、書籍だけでなく、インターネットでも様々な医学情報を入手できるようになっています。

 しかし、実際に目の前にある事案に即した医学的評価や判断となると、文献やインターネットで得られる医学知識だけでは判断がつかないことがあります。法律の分野でも、この世に同じ事案は二つと存在しないため、条文や判例を知っているだけでは足りず、当該事案の具体的事情をどのように条文等に適用(あてはめ)するかの判断や見極めが求められ、これが難しいところですが、医療の分野においても、個別具体的な事案に即した的確な医学的判断や見極めをすることがいかに難しいものであるかを感じます。

 そうした時、医療の専門家である協力医から医学的アドバイスをいただくことで、医療事件の調査を進める上で重要な気づきや示唆を得られます。協力医の意見聴取と呼ばれる手続ですが、私自身、ある麻酔事故の調査において、協力医から、多くの臨床経験に照らして、局所麻酔薬中毒やアナフィラキシーショックは考えられず、くも膜下腔への誤注入に違いないとのご意見をいただき、一気に疑問が氷解したことがありました。

 もちろん法的責任の追及に有利な意見だけをいただけるものではありませんが、それも含めて、第三者的立場から客観的な医学的アドバイスを述べてもらうことで、診療経過に対する医学的理解が大きく深まるように感じます。私のつたない経験ではありますが、一般的にはあまり馴染みのない手続と思ったのでエッセイにしてみました。協力医の意見聴取がどのようなものなのかを理解していただく一助になれば幸いです。

以 上

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