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口頭弁論の技術(彦坂 幸伸)

 民事裁判では、当事者の主張や反論は、「訴状」「答弁書」「準備書面」といった書面を裁判官に提出することで行われます。裁判官は、こうした書面を読んで心証を得ています。医療訴訟のように、専門性が高かったり、事実関係が複雑な事件では、分かりやすくて説得的な書面を作ることが、弁護士の腕の見せどころでもあります。

 ところが、最近、裁判官が、当事者の弁護士に対し、書面の提出だけでなく、口頭での弁論―プレゼンテーション―を求めるようになってきました。裁判官にとって、口頭でのプレゼンがあったほうが、書面を読むだけよりもさらに理解がしやすく、心証を得やすい、という理由です。
 特に、異動で新たな裁判官が赴任したとき、裁判官は、それまでの当事者の主張を口頭でプレゼンするよう求めることが多いようです。こうしたプレゼンは、裁判官たちの間で広く読まれている法律雑誌にも実践例が掲載されていて、一部の裁判官たちのトレンドになっているようです。

 弁護士にとって、口頭で事実関係や法律上の主張をするというのは、書面を作るのとは別の技術も必要になってきます。裁判官が、より理解しやすく、より心証を得やすいように口頭での弁論を求めているのですから、弁護士はその要求に応えるような技術をもって、弁論をすることが求められるのでしょう。
 例えば、耳で聞いて分かる言葉で伝える。ワンセンテンス・ワンミーニングにする。不要なディテールは省く。なるべく書面に頼らず、裁判官たちの目を見ながら語る。適切に抑揚をつけたり、間をとったりする。最初と最後は強いメッセージを伝える。などなど。

 民事裁判における口頭での弁論が、今後一層広まって定着するのか、一時のトレンドで終わってしまうのかは分かりませんが、書面作成の力や、尋問の技術だけでなく、口頭弁論の技術も磨いてゆこうと思っています。

以 上 

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