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後見人として医師の説明に立ち会って(藤田 陽子)

 
 私は弁護士になって間もなくして医療問題弁護団に所属し、患者側代理人という立場で医療機関にかかわってきました。
 他方、ここ数年、私個人としては、認知症となったご高齢の方の後見人として、医療機関とかかわることが増えてきました。
 後見人とは、認知症などのために判断能力が低下してしまった人に代わって、契約などを行う仕事で、裁判所により選任されます。ご親族が選任される場合もありますが、弁護士のほか、司法書士や社会福祉士が選ばれることが多いです。

 後見人の業務は主として財産管理です。
 医療機関との関係では、後見人は、基本的に入退院時の手続、費用精算などといった金銭面にかかわります。
 後見人の仕事をしていて困るのが、医療機関から医療に関する同意を求められることです。たとえば本人が重篤な状態になった際に延命治療を望むかどうかについてです。後見人には医療同意の権限がありませんし、本人がご高齢の場合は、延命治療を行うことが本人のためになるのかどうか難しい判断になりますので、ご親族に判断してもらいます。

 医師からの病状説明、手術が必要な場合の手術方法、リスク説明をご家族と一緒に聞く場合もあります。同意書に署名を求められる場面に遭遇することもあります。
 医療事件では、説明義務が問題となる場面です。

 医師の説明義務について、最高裁は、「医師は、患者の疾患の治療のために手術を実施するに当たっては、診療契約に基づき、特別の事情のない限り、患者に対し、当該疾患の診断(病名と症状)、実施予定の手術の内容、手術に付随する危険性、他に選択可能な治療方法があれば、その内容と利害得失、予後などについて説明すべき義務がある」としています(平成13年11月27日判決)。
 後見人として医師の説明に立ち会ってみての疑問の1つは、上記最高裁で求められているような項目について説明が行われているのかという点です。
 例えば、同意書は渡すものの、そこに記載されている項目について口頭での説明が不足している場合もありますし、他に選択可能な治療方法については、そもそも医師が実施を検討していない施術については、説明が不十分なのではないかと感じることがあります。
 2つめの疑問は、医師と患者の医学的な前提知識が異なる中で、患者やご家族が理解しているかを、医師はどうやって判断しているのかということです。
 説明をする際に、できるだけ専門用語を平易な言葉でわかりやすく説明しようと努力されている医師も多いとは感じます。
 しかし、説明を医学用語と完全に切り離して行うことは困難です。また、医師と患者側では、前提として持っている知識が異なるため、同じ情報でもその内容についての理解の有無、程度、内容は異なってきます。
 医師側としても、患者側がどの程度理解できているかどうかについては、よく分からないのではないでしょうか。
 患者側の方も、医師とは持っている知識が異なることから、医師が意図したような説明を十分に受けられていない可能性があります。

 私は立ち会う中で気付いたところがあれば、ご家族に確認したり、質問したりすることがあります。ご家族が同意書にサインする際に、声かけをすることもあります。それでも医師と患者側の間に認識のずれが生じないとは言い切れないように思います。
 実質的なインフォームド・コンセントのために、最高裁判決で述べられていること以外にも患者や家族の理解を確認するなど、さらに考えていくべきことがあるのではないでしょうか。

以 上

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