団員リレーエッセイ弁護士の声

患者の権利オンブズマン東京をご存じですか( 笹川 麻利恵)

 患者の権利オンブズマン東京は、患者の権利を促進し、医療福祉システムの改善と質の向上をはかることを目的とする市民団体です。発足は2002年12月ですので、もうすぐ20周年を迎えます。市民相談員を中心とするボランティア団体です。私は幹事をしており、広報の担当もしています。

 活動の中心は相談活動にあります。新型コロナウィルス感染問題前は、市民相談員2名と法律専門相談員1名で、無料の面談相談を行っていました。新型コロナウィルス感染問題後は、メールや郵送の方法で文書での相談を行っています。

 私は弁護士になりたての頃から参加していますが、はじめは、医療問題弁護団の相談と、患者の権利オンブズマン東京の相談との違いがよく分かりませんでした。ついつい、法的問題点を分析しだしてしまう癖が抜けず、市民相談員の方々に助けていただきました。

 違いについて簡単に述べれば、患者の権利オンブズマン東京の相談は、患者と医療者とのコミュニケーションのサポートや患者の自律的な行動をサポートするためのもので、損害賠償請求を目的とするものではありません。(損害賠償請求を目的とされている方からの相談についてはお受けできませんので、医療問題弁護団などをご紹介しています。)

「医師に聞きたいことが聞けない」
「病院の対応に問題がある」
などの患者側の苦情の解決方法を市民相談員と一緒に考えて助言しています。
 患者の権利オンブズマン東京で相談をお受けしていると、患者の苦情や不満というのは、損害賠償請求を目的とするものばかりではないことが良く分かります。

 医師と患者はその知識量や専門性に大きな差がありますから、対等な立場でコミュニケーションをとることは簡単ではありません。情報も医療者の側に偏在しています。医師は数多くの患者を抱え多忙であって、一人の患者にかけられる時間は限られるでしょう。一方で、病に苦しむ患者にとっては医師が頼りであり、不誠実な対応を受けた場合のショックは甚大です。関係がギクシャクし始めると思うような治療効果も得られなくなりがちです。

 コミュニケーションエラーと一括りにできないような複雑な背景が、医師と患者との間にはあるように思います。ベテランの市民相談員と力を合わせて、問題の糸を解きほぐしていくように毎回奮闘しています。

 市民相談員の方々は、よりよい相談が行えるように、本当によく勉強なさっており、頭が下がります。弁護士視点とは異なるアドバイスは智慧に富んでいて、気づかされることが多いです。このエッセーを読んでくださっている皆さまにもご相談いただければと思います。

 相談活動のほかには、調査点検活動なども行っています。当会のホームページにはこれまでの調査点検事例が掲載されています。オンブズマンメンバーが力を注いで作成した調査勧告書(乳がん手術についてのインフォームド・コンセントや術後の疼痛などの苦情が問題となる事案)もあります(http://kanjakenri.com/chousa_tenken.html)。
 是非ご覧になってください。

以 上

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