| 相手方施設 | 総合病院(公立) |
| 診療科 | 泌尿器科・外科 |
| 患者属性 | 80歳代男性 |
| 原疾患 | 癌 |
| 過誤の内容 | 後腹膜膜鏡下における片側腎尿管全摘術の数日後、腸管穿孔による汎発性腹膜炎により死亡 |
| 主たる争点 | 手技上の過失の有無、手術適応の有無、説明義務違反の有無 |
| 進行の概略 | 院内事故調査の後、医療法上の医療事故調査・支援センターでの調査を経て示談 |
| 苦労・工夫した点 | 院内調査報告書においては、死亡の直接的な原因となった腸管の穿孔は術中穿孔ではなく遅発性穿孔と位置付けられていた。2名の協力医から術中穿孔との意見及びその原因となる手技上の問題点を聴取し、医療事故調査センターに術中穿孔である点を指摘したところ、術中穿孔が認定された。 |
| 結果 | 示談 |
| 弁護士の事案の評価・感想 | センター調査では、手術の決定に係る治療法選択について、協力医聴取でも得られていなかった具体的な問題点の指摘もあり、本件では制度の利用が結果としてスムーズな示談成立の一助となった。 |
| その他、今後に向けて | センター調査の利用にあたり、当初、病院側は、腸管損傷は、術前説明書に記載されている周辺臓器損傷というリスクが表面化したもので、予測可能な合併症であり、制度を利用するための医療法施行規則1条の10の2「非予期性」の要件を満たさないと主張していた。この点については、厚生労働省や日本医師会が、同要件について「一般的な死亡の可能性についての説明や記録ではなく、当該患者個人の臨床経過等を踏まえて、当該死亡または死産が起こり得ることについての説明及び記録であること」との解釈を公表していることを指摘し、調査実施を求めたところ、(病院側としての見解は異なるものの)事案の重大性を考慮して制度を利用するとの回答が得られた。 同様の主張が病院側からあった場合の対応の一助となれば幸いである。 |