経験のない胸痛への対応

相手方施設の属性 東京以外の病院(循環器科無し)
診療科 泌尿器科
患者属性 70歳代男性
原疾患 がん
過誤の内容 入院中、患者がこれまで経験したことのない胸痛を訴えたのに対し、画像診断や専門的な医療機関への転送がなされないまま、不安定狭心症疑いにて経過観察され、数時間後に他の致死性の高い循環器疾患に起因する心タンポナーデで死亡した事案
主たる争点 いずれの時点で致死的な心疾患を疑って対応すべきであったか。
進行の概略 相手方施設が、医療法上の医療事故報告を行わず、裁判前の当方からの損害賠償請求に対し全くの無責回答であったので、訴訟提起をした。
苦労・工夫した点 十分な検査・診断を尽くされていない事案で、どの時点のどのような所見で適切な診断をすべきであったか・できたかに関して、裁判所に適切な心証をもってもらうこと。
結果 訴訟上の和解
弁護士の事案の評価・感想 十分な検査・診断が尽くされていない事案の難しさを改めて実感した。
その他、今後に向けて 本件は、本来であれば、相手方施設が、医療事故報告の上調査すべき事案だった。医療事故調査を行わない医療機関には適切な対応を求めていくことが重要である。

子宮筋腫

相手方施設の属性 総合病院
診療科 産婦人科
原疾患 子宮筋腫
過誤の内容 出産に関する手術の際に体内に異物を残した事案
主たる争点 異物を残したことに起因した損害額
進行の概略 異物を残したことは争いがなかったため、損害額が主たる争点となった。
苦労・工夫した点 因果関係のある損害の範囲の検討に苦労した。
結果 裁判外の和解
弁護士の事案の評価・感想 過去にも術中に体内に遺物を残す例は複数例あるものの、損害算定にあたっては慰謝料等をどのように理解するかは慎重に検討した。異物を残したことそのものの慰謝料及びそれに起因した身体の不具合に対する精神的苦痛を本件でも請求したが、今後も実態に即した慰謝料の検討は必要と思われる。

左肩関節症等

相手方施設の属性 総合病院
診療科 整形外科
原疾患 左肩の関節症等
過誤の内容 手術やリハビリに起因して、疾病部位ではない左肘の神経障害等の被害を受けた事案
主たる争点 手技上の過失の有無及び損害額
苦労・工夫した点 医師の意見書を出すことが難しく、後医面談時の診療録を提出するなどした。
結果 判決(一部認容)
弁護士の事案の評価・感想 手技上の過失については、文献による立証にも限界があるため、臨床現場の医師の意見等が重要になると感じた。後医の診療録による意見の補充等の工夫は今後も模索していきたい。