団員リレーエッセイ弁護士の声

民事裁判手続のデジタル化と医療事件(晴柀 雄太)

1 はじめに

 遅くとも令和8年5月までに施行予定の改正民事訴訟法等により、民事訴訟手続が全面的にデジタル化される予定です。僕も最近、ようやく裁判所のYouTubeチャンネルにアップロードされている解説動画(全4本)を視聴しました。
 そこで、デジタル化により変化する場面で、医療事件との関係で気になることを述べておきます。

2 書面提出

 デジタル化後は、裁判所に提出する訴状、主張書面及び証拠は、紙ではなくデータで提出します。押印も不要になるようです。デジタル化されれば、①印刷、②製本・押印、③宛名書き、④投函という各作業がなくなるわけですから、大歓迎です。
 提出書面は裁判所のシステム上で確認できるので、紙の個人情報の管理に気を遣うことは少なくなるでしょうし、コピー用紙を購入する機会も減りそうですね。
 注意しなくてはならないのが、弁護士は、パソコンの故障等の理由があっても紙で訴状等の申立書面を提出すると不適法となることです。提出期限を徒過しないよう、モニターやハードディスク等が壊れても焦ることなく作業を継続できるような体制をとっておく必要がありそうです。
 医療事件の場面でいうと診療録等は電子化されていることが多いので、裁判手続においても電子データとして取り扱うことに違和感を覚えることはないでしょう。また、診療経過が長くなれば診療録だけで分厚いファイルが並ぶことになりますが、これをデータで管理できるようになることは事務所の物理的なスペースとの関係でも嬉しい変化です。ただ、パソコンの画面よりも紙の方が読みやすいと感じることもあるので、その時は紙に出力しなくてはならなそうです。

3 郵便切手

 いまは、提訴や申立ての際、収入印紙を購入して、これを訴状等に貼付して窓口に持参していますが、デジタル化後はその必要がなくなります。郵便切手代のみ電子納付していましたが、訴え提起等の手数料に郵便費用相当額が含まれることになり、印紙代も含めて電子納付することになります。

4 尋問

 いま、証人尋問は原則として対面で実施されています(尋問以外の裁判期日はウェブ会議で進めることも多いです。)が、デジタル化後は緩やかにウェブ尋問が可能になるようです。
 しかし、証人尋問は、対面でやりとりするからこそ裁判官の心証形成に有効であり、ウェブ尋問で足りると感じることは少ないのではないでしょうか。事実認定のための弁論の聴取や証拠の取調べを受訴裁判所の裁判官自身が行う原則を直接主義といい、直接主義の要請によって、証言は法廷において裁判所の面前でなされるのが原則と考えられるからです(伊藤眞『民事訴訟法』(第7版、2020年、有斐閣)276頁、415頁)。
 特に医療事件にウェブ尋問は馴染まないと思いますが、医療事件に限らず、ウェブ尋問が浸透するのはもう少し先のことのような気がします。

5 おわりに

 正直、来年の5月にデジタル化にパッと切り替わることを想像できずにこのエッセイを執筆していますから、数年後にこのエッセイが読まれた時に「こんなつまらないことを考えていたのか」「もっと重要な問題があったのに、何もわかっていなかった」と笑われてしまうのかもしれません。
 そんな不安を感じつつ、まずは自分の能力では到底抗うことができない、パソコン関連機器(ハードディスク、キーボード、マウス、モニター類)の故障があった時用の予備の機器を購入することから準備を始める決意をして、筆を置くことにしました。

以 上 

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