団員リレーエッセイ弁護士の声
HIFU被害対策弁護団の活動について(川見 未華)
現在、HIFU被害対策弁護団(以下、「HIFU弁護団」といいます。)として、活動を行っています。
HIFU施術の問題点やこれまでの経過について、簡単にご紹介します。
1 HIFUとは
HIFUとは、高密度焦点式超音波(High Intensity Focused Ultrasound)の略称です。
集束超音波の熱エネルギーにより、体内の組織を高温に加熱するもので、焼灼/凝固の侵襲作用により前立腺がん治療などに用いられる技術です。美容で用いられるものはその治療の技術を転用したものです。
表皮に熱傷を起こさず任意の皮下組織に熱を与えることができるため、美容では、主にたるみや痩身の治療に用いられています。
このように、HIFUは有用な治療機器ですが、出力を間違えたり、超音波をあてている時間が長かったりすると熱が伝わりすぎて熱傷が生じたり、照射部位を間違えると神経を障害してしまうなどのリスクもあります。
HIFUの不適切な使用による被害は、以前から多く報告されており、特に、医療機関ではないエステサロンにおける被害が多く発生していました。
2 HIFU施術と医行為該当性
医師法17条は、「医師でなければ、医業をなしてはならない。」と定めています。そのため、「医行為」を医師資格がない者が行えば、医師法17条違反となり、刑事罰の対象となります。
HIFU施術は、上記のとおり身体に侵襲を加えるものであり、従前より、「医行為」なのではないかという問題点が指摘されていました。
平成29年3月2日には、国民生活センターが、「エステサロン等でのHIFU機器による施術でトラブル発生!-熱傷や神経損傷を生じた事例も-」と題するプレスリリースを出し、エステティシャン等がHIFU機器を用いて皮下組織に直接熱作用を加え、危害を及ぼすような美容施術を行うことは、「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定める医師法17条に抵触するおそれがあることを指摘しました。
エステティック関連の業界の主要団体も、会員に対して、HIFU施術を自主的に禁止する勧告や注意喚起を出しました。
しかしながら、HIFUが医行為であるという法解釈について明確に定めるものはなく、エステティシャンなどの非医療者による施術が広く行われてきたという実情がありました。
3 消費者庁の調査報告書、厚労省の通知
令和5年3月29日、消費者庁の消費者安全調査委員会が、エステサロン等でのHIFUによる事故に関する調査報告書を公表しました。同報告書では、医師資格のないエステティシャンによるHIFU施術は「医師法に抵触するおそれがある」と結論づけました。
さらに令和6年6月7日、厚生労働省が、「医師免許を有しない者が行った高密度焦点式超音波を用いた施術について」という通知を出し、HIFU施術が医行為であることを明言しました。
この厚労省の通知により、ようやく、HIFU施術が医行為であることが明確になり、警察や行政等の諸機関が、HIFU施術が医行為にあたることを前提として動くことができるようになりました。
4 弁護団の活動のご紹介
HIFU弁護団は、令和5年4月、消費者庁の調査報告書が公表されたことを契機として実施したホットラインから始まり、その後、正式に弁護団を結成しました。
現在も、被害救済に向けた活動を続けています。
HIFUに関する被害相談は、HIFU施術が医行為であり、非医療者が行ってはならないものであるという特徴的な論点がありますが、それ以外の点では、施術前の不十分な説明や、不適切な手技による身体被害(火傷など)など、他の美容医療のご相談と共通する内容が多いです。施術を実施した機関も、エステサロンばかりでなく、医療機関も相当数含まれています。
令和6年6月の厚労省の通知後は、エステサロンにおけるHIFU施術による被害の相談は減った印象がありますが、ゼロというわけではありません。非医療者によるHIFU施術は、医師法違反であり、刑事罰の対象となる行為であり、決して許されるものではありません。
美容に関する被害相談のハードルが高いからか、弁護団としてこれまで相談を受けた件数は、実際に生じた被害件数と比較しても、決して多い数とはいえないと感じています。被害をより広く汲み取る方策を、検討しなければならないところです。
HIFU弁護団としては、今後も、被害救済はもちろん、再発防止に向けた活動に積極的に取り組んでいきたいと考えています。
以 上

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