| 相手方施設 | 総合病院 |
| 診療科 | 泌尿器科 |
| 原疾患 | 腎腫瘍 |
| 過誤の内容 | 体重の誤登録により麻酔用筋弛緩剤や麻薬が多く投与され、さらに呼吸抑制に対して帰室後のモニタリングがなされず患者が低酸素脳症となった事案 |
| 主たる争点 | 麻酔用筋弛緩剤や麻薬の過剰投与、筋弛緩モニタリングの義務、帰室後のモニタリング義務など |
| 進行の概略 | 外部委員を入れた院内事故調査が実施され、報告書を基にした質問回答の後、説明会が開催された。話し合いによって合意に至り示談した。 |
| 苦労・工夫した点 | 説明会が開催でき、双方にとって建設的な進行とできた点。患者に後見人を付したうえで示談した点。 |
| 結果 | 示談 |
| 弁護士の事案の評価・感想 | 病院側が外部委員を入れた院内事故調査を実施し医療安全の実現に主体的だったこともあり、説明会が開催され、患者家族の思いを伝えたり、糾弾的とならない状況で当事者となる医療従事者からの謝罪がなされたりできた。その後の示談交渉では将来医療費や介護費を含めた解決ができた。 |
| その他、今後に向けて | 院内事故調査により原因分析と再発防止に向けた検討がなされたことが、被害の重大性や患者家族の辛い心情の中でも糾弾的にならずに話し合える土壌を作ったように思う。 |
投稿者: admin
安原幸彦代表が日本臨床医学リスクマネージメント学会医療安全セミナーで講演をしました
2025年8月8日、安原幸彦代表が日本臨床医学リスクマネージメント学会医療安全セミナーで「患者側弁護士から見た「医事紛争」」と題した講演をしました。
経験のない胸痛への対応
| 相手方施設 | 東京以外の病院(循環器科無し) |
| 診療科 | 泌尿器科 |
| 患者属性 | 70歳代男性 |
| 原疾患 | がん |
| 過誤の内容 | 入院中、患者がこれまで経験したことのない胸痛を訴えたのに対し、画像診断や専門的な医療機関への転送がなされないまま、不安定狭心症疑いにて経過観察され、数時間後に他の致死性の高い循環器疾患に起因する心タンポナーデで死亡した事案 |
| 主たる争点 | いずれの時点で致死的な心疾患を疑って対応すべきであったか。 |
| 進行の概略 | 相手方施設が、医療法上の医療事故報告を行わず、裁判前の当方からの損害賠償請求に対し全くの無責回答であったので、訴訟提起をした。 |
| 苦労・工夫した点 | 十分な検査・診断を尽くされていない事案で、どの時点のどのような所見で適切な診断をすべきであったか・できたかに関して、裁判所に適切な心証をもってもらうこと。 |
| 結果 | 訴訟上の和解 |
| 弁護士の事案の評価・感想 | 十分な検査・診断が尽くされていない事案の難しさを改めて実感した。 |
| その他、今後に向けて | 本件は、本来であれば、相手方施設が、医療事故報告の上調査すべき事案だった。医療事故調査を行わない医療機関には適切な対応を求めていくことが重要である。 |
子宮筋腫
| 相手方施設 | 総合病院 |
| 診療科 | 産婦人科 |
| 原疾患 | 子宮筋腫 |
| 過誤の内容 | 出産に関する手術の際に体内に異物を残した事案 |
| 主たる争点 | 異物を残したことに起因した損害額 |
| 進行の概略 | 異物を残したことは争いがなかったため、損害額が主たる争点となった。 |
| 苦労・工夫した点 | 因果関係のある損害の範囲の検討に苦労した。 |
| 結果 | 裁判外の和解 |
| 弁護士の事案の評価・感想 | 過去にも術中に体内に遺物を残す例は複数例あるものの、損害算定にあたっては慰謝料等をどのように理解するかは慎重に検討した。異物を残したことそのものの慰謝料及びそれに起因した身体の不具合に対する精神的苦痛を本件でも請求したが、今後も実態に即した慰謝料の検討は必要と思われる。 |
左肩関節症等
| 相手方施設 | 総合病院 |
| 診療科 | 整形外科 |
| 原疾患 | 左肩の関節症等 |
| 過誤の内容 | 手術やリハビリに起因して、疾病部位ではない左肘の神経障害等の被害を受けた事案 |
| 主たる争点 | 手技上の過失の有無及び損害額 |
| 苦労・工夫した点 | 医師の意見書を出すことが難しく、後医面談時の診療録を提出するなどした。 |
| 結果 | 判決(一部認容) |
| 弁護士の事案の評価・感想 | 手技上の過失については、文献による立証にも限界があるため、臨床現場の医師の意見等が重要になると感じた。後医の診療録による意見の補充等の工夫は今後も模索していきたい。 |
8月3日(日)16:00~17:00 署名活動を池袋駅西口ロータリー前で行いました。
公正な医療事故調査制度の確立を求めて チラシ配布・署名活動を次の日時・場所で行いました。
<第159弾>2025年8月3日(日)16:00~17:00
場所 JR山手線池袋駅 西口ロータリー前
7月6日(日)16:00~17:00 署名活動を御茶ノ水駅御茶ノ水橋口改札前で行いました
公正な医療事故調査制度の確立を求めて チラシ配布・署名活動を次の日時・場所で行いました。
<第158弾>2025年7月6日(日)16:00~17:00
場所 JR中央線御茶ノ水駅 御茶ノ水橋口改札前
帽状腱膜下血腫
| 相手方施設 | 産科婦人科クリニック |
| 診療科 | 産科 新生児科 |
| 患者属性 | 出生児 |
| 原疾患 | 帽状腱膜下血腫 |
| 過誤の内容 | 出生児の帽状腱膜下血腫の発見が遅れたことから、児が出血性ショックにより、DICとなり、出生翌日に死亡した事案。 |
| 主たる争点 | 吸引分娩・鉗子分娩において産瘤を生じて出生した正期産新生児である児が適切に経過観察され適時に搬送されていれば、救命された高度の蓋然性があるか。 |
| 進行の概略 | 相手方は、吸引分娩・鉗子分娩で出生した児に対して、帽状腱膜下血腫のリスクを視野に入れ、経過観察をすべき義務違反があることについてはほとんど争わなかったものの、因果関係については、急激に変化したもので、早期発見が難しかった、などとして争う姿勢を見せた。 |
| 苦労・工夫した点 | 因果関係の主張立証に苦労した。 |
| 結果 | 示談 |
| 弁護士の事案の評価・感想 | 相手方では、吸引分娩・鉗子分娩で出生した児(しかも産褥あり)に対して、出血に関する観察をしていた記録が残っておらず、そもそも帽状腱膜下血腫となる可能性を考慮していなかったことが強く推認された。 不作為事案かつ診療記録が不十分な事案であったため、因果関係の立論には労を要した。 |
片側腎尿管全摘術後の腸管穿孔
| 相手方施設 | 総合病院(公立) |
| 診療科 | 泌尿器科・外科 |
| 患者属性 | 80歳代男性 |
| 原疾患 | 癌 |
| 過誤の内容 | 後腹膜膜鏡下における片側腎尿管全摘術の数日後、腸管穿孔による汎発性腹膜炎により死亡 |
| 主たる争点 | 手技上の過失の有無、手術適応の有無、説明義務違反の有無 |
| 進行の概略 | 院内事故調査の後、医療法上の医療事故調査・支援センターでの調査を経て示談 |
| 苦労・工夫した点 | 院内調査報告書においては、死亡の直接的な原因となった腸管の穿孔は術中穿孔ではなく遅発性穿孔と位置付けられていた。2名の協力医から術中穿孔との意見及びその原因となる手技上の問題点を聴取し、医療事故調査センターに術中穿孔である点を指摘したところ、術中穿孔が認定された。 |
| 結果 | 示談 |
| 弁護士の事案の評価・感想 | センター調査では、手術の決定に係る治療法選択について、協力医聴取でも得られていなかった具体的な問題点の指摘もあり、本件では制度の利用が結果としてスムーズな示談成立の一助となった。 |
| その他、今後に向けて | センター調査の利用にあたり、当初、病院側は、腸管損傷は、術前説明書に記載されている周辺臓器損傷というリスクが表面化したもので、予測可能な合併症であり、制度を利用するための医療法施行規則1条の10の2「非予期性」の要件を満たさないと主張していた。この点については、厚生労働省や日本医師会が、同要件について「一般的な死亡の可能性についての説明や記録ではなく、当該患者個人の臨床経過等を踏まえて、当該死亡または死産が起こり得ることについての説明及び記録であること」との解釈を公表していることを指摘し、調査実施を求めたところ、(病院側としての見解は異なるものの)事案の重大性を考慮して制度を利用するとの回答が得られた。 同様の主張が病院側からあった場合の対応の一助となれば幸いである。 |
木下正一郎団員が「医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会」に参加しました
2025年6月27日(金)、木下正一郎団員が、厚生労働省の「医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会」の構成委員として、第1回検討会の議論に参加しました。
同検討会は、医療機関内部における事故報告等の医療安全体制の確保や医療事故調査制度などの医療安全施策とその課題を整理し、対応策を検討することを目的とするものです。
今後の議論を注視ください

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