Q9.医療裁判の現状相談からの流れ
医療ミスの報道などを目にしますが、医療裁判は全体としてどのような傾向があるのでしょうか。教えてください。
医療裁判とは、患者側が医療側の医療ミスの責任を問う民事裁判です。
2004年には1年間に全国で1000件を超える医療裁判が起こされ、これまでのピークを迎えました。その後減少傾向が見られ、2009年には732件まで減少しました。その後若干の増加傾向が見られ、2014年には877件の医療裁判が起こされています。
※最高裁判所医事関係訴訟委員会のホームページ
検索エンジンで「医事関係訴訟委員会」で検索すると、医療訴訟の統計が掲載されたページが表示されます。
http://www.courts.go.jp/saikosai/iinkai/izikankei/
統計には「医事関係訴訟事件の処理状況及び平均審理期間」「医事関係訴訟事件の終局区分別既済件数及びその割合」「地裁民事第一審通常訴訟事件・医事関係訴訟事件の認容率」「医事関係訴訟事件(地裁)の診療科目別既済件数」があります。
また、以前に比べ裁判期間が短くなっています。かなり以前には医療訴訟が「5年裁判10年裁判は当たり前」のように言われていました。2014年の「第1審」、つまり地方裁判所で訴えを起こして終わるまでの裁判期間は、全国平均で22.6月となっています。
東京、大阪、その他多くの大中規模都市の地方裁判所で「医療集中部」と呼ばれる、医療事件を扱う部署が設けられました。裁判官が医療裁判に熟練していることもあって、迅速な審理が行われています。
さらに、医療裁判は和解で終了するものが5割弱、判決となるものが4割弱です。判決の場合、患者側の勝訴率は2割程度で、普通の民事裁判(勝訴率8割程度)に比べて、難しいものであることに変わりはありません。
このような現状から、いったん医療裁判を起こすと迅速に進み、専門的で難しく、患者側が勝訴するのは難しいという実態がおわかりいただけると思います。
したがって、医療裁判を起こす前に、ミスはどこにあるのか、患者の被害はミスとどのように結びついているのかなど、事件をよくよく吟味検討して裁判に臨むことが、ますます重要になっています。