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団員リレーエッセイ弁護士の声

研修班での活動について(森田 和雅)

※ 本エッセイは、医療事故情報センターセンターニュース2023年3月号に掲載された記事を、医療事故情報センター様、森田団員のご了承を得て転載するものです。

1 はじめに

 私は、平成30年12月に弁護士登録を行い、現在5年目を迎えました。弁護士登録をした直後に、東京三会の新規登録弁護士向けに行われた新人ガイダンスという企画に参加し、患者側弁護士の活動に魅力を感じたため、東京の医療問題弁護団に入団をしました。
 当弁護団では、個別の医療事件についての活動とは別に、政策班や研究班、ホームページ班、研修班といった班での活動を行っており、私は、主に団員向けの研修の企画・運営等を行う研修班に所属しております。
 今回のリレーエッセイでは、私が所属している研修班が普段どのような研修の企画・運営を行っているのかについてお話したいと思います。

2 新人ガイダンス

 毎年、新規登録弁護士の一斉登録直後頃の時期に行っている企画であり、講師を務める団員1名が患者側弁護士のやりがいや魅力等について講演を行うほか、幹事長や政策班等の各班の班長から医療問題弁護団の概要や班活動等について説明を行っています。この新人ガイダンスは、志を同じくする弁護士に加入してもらい、団員を増やしていくための重要な企画ですので、患者側弁護士の魅力や医療問題弁護団の活動の楽しさが少しでも伝わることを心掛けております。
 前述のとおり、私も、この新人ガイダンスで講師の先生がお話された具体的な医療事件のエピソードを聞いて患者側弁護士の活動に魅力を感じ、入団を決意することになりました。近年は新型コロナウイルスの影響で実施できておりませんが、ガイダンス後の懇親会も新人獲得のための重要な場であると思いますので、様子を見つついつか懇親会も復活できることを願っております。

3 基礎研修

 医療事件は他の分野の事件に比べて専門性が高いため、初めて相談を受けて実際に受任するのは中々ハードルが高いと思います。そこで、研修班では、主に新人や経験の浅い団員を対象に、「基礎研修(調査編)」「基礎研修(訴訟編)」という研修を年に1回ずつ開催しています。
 基礎研修(調査編)では、初回の法律相談に向けて行うべき準備から、調査受任をした後の診療記録の入手・分析、診療経過一覧表の作成、医学文献や協力医等からの医学的知見の収集等について、講義を行っています。
 また、基礎研修(訴訟編)では、訴状や証拠の作成方法、証人尋問の準備の仕方、鑑定への対応方法等について、医療事件特有の注意点や工夫すべき点を踏まえて、経験豊富な団員が実際の事件で作成した訴状を示したりしながら講義をする研修であり、ある程度経験を積んだ団員にとっても参考としていただけるような内容となっております。
 なお、当弁護団では、新たに入団した団員が法律相談の配点を受けるための条件として、基礎研修(調査編)の受講を義務付けております。

4 尋問研修

 概ね2年に1回の頻度で、実際の事件記録に近い模擬記録を用いて医療機関側医師に対して証人尋問を行うという研修を行っています。
 証人である医療機関側医師の役は、例年、当弁護団の活動にご協力くださっている実際の医師に努めていただいております。受講者は2人ペアになり、経験豊富な指導担当弁護士のサポートのもと、模擬記録をもとに尋問事項を練って準備をし、証人尋問に臨みます。
 尋問実施後は、当弁護団のベテラン団員に加えて、ゲスト参加していただいている東京地裁医療集中部の裁判官や普段医療機関側の代理人をされている弁護士から講評をいただきます。
 私も受講者としてこの研修に参加をしたことがありますが、リアルな記録をもとに本物の医師に尋問をすることができるというだけでとても貴重な機会ですし、医療集中部の裁判官や医療機関側弁護士からも講評をいただくというのは実際の事件はできないことなので、本当に貴重な経験をすることができたと感じています。

5 医学研修

 概ね年に1回程度の頻度で、実際の医療現場の第一線でご活躍されている医師を講師としてお招きし、団員向けに医学的知見についてご講義いただくという医学研修を開催しております。
 例えば近年では、整形外科医による骨折の基本についてのご講義、脳神経外科医による脳動脈瘤事案を理解するためのご講義、産婦人科医による内視鏡手術についてのご講義等がございました。医師の先生方は、私ども医学の素人である弁護士でも理解できるように噛み砕いてお話してくださり、資料も大変分かりやすく作成してくださっているので、医学的知見を学ぶという意味では、大変貴重な機会であると感じています。

6 病院見学

 近年は新型コロナウイルスの影響で実施できておりませんが、病院に訪問し、外科手術を見学させていただいたり、一晩泊まり込みで救命救急センターの現場を見学させていただいたりするような研修を行っております。私も実際に、救命救急センターの見学に参加させていただく機会がありましたが、ドラマやドキュメンタリー番組等でしか見たことがなかった救命救急の現場を生で見ることができ、しかも、現場で働かれている医師や看護師の方々と直接お話をすることができ、とても刺激的で非日常的な経験をさせていただけたと感じました。
 それとともに、救命救急が、患者さんにとっての適切な処置を常に迅速に判断することが求められる厳しい現場であることを改めて感じ、患者側弁護士としても理解をしておくべき医療現場の実態の一端を理解することができたように思い、大変有意義な経験をすることができたと思います。
 個人的には、私がこれまでに参加した当弁護団の研修の中で一番印象に残っているので、またいつかこの研修を復活できる日が来ることを願っております。

7 さいごに

 このように、当弁護団の研修班では、様々な内容の研修を継続的に企画・運営しております。
 これまで、実際に受講者として参加し、企画・運営にも携わって強く感じたことですが、このような充実した貴重な研修を受けることができるというのは、医療問題弁護団に所属することの大変大きなメリットの1つであると思います。
 これからも、「医療における患者の権利を確立し、安全で良質な医療を実現する」という当弁護団の究極の目的を実現するべく、団員のスキルアップ・研鑽のために、引き続き研修の企画・運営に携わってまいりたいと思います。

以 上

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