2023(令和5)年11月29日、松井団員の講義DVDの上映による基礎研修(調査編)を開催しました。
診療記録の入手・検討、医療文献の収集・検討、協力医面談の方法、求説明交渉、方針決定等の調査全般について、実践的な講義と質疑応答がなされ、自分の業務を振り返るよい機会となった、今後の調査業務に活かしていきたいなどと、とても好評でした。
2023(令和5)年11月29日、松井団員の講義DVDの上映による基礎研修(調査編)を開催しました。
診療記録の入手・検討、医療文献の収集・検討、協力医面談の方法、求説明交渉、方針決定等の調査全般について、実践的な講義と質疑応答がなされ、自分の業務を振り返るよい機会となった、今後の調査業務に活かしていきたいなどと、とても好評でした。
2023(令和5)年11月22日、東京三弁護士会主催で「医療事件における提訴前の医学文献調査~具体的経験をもとに~」が開催され、松井菜採団員、松田耕平団員、川見未華団員が講師として登壇しました。
法律書や研修で、医療事件の医学文献調査について記述されることを、実際の事件でどのようなツールでどのような点を調査したのか、訴訟提起事案、調査段階で損害賠償請求は断念した事案、歯科や美容事案、外国文献を調査した事案など、それぞれの具体的な経験が語られました。
200名を超える申し込みがあり、当日の受講者も150名近くと、参加人数もさることながら、全国の医療事件に経験豊富な弁護士から新人弁護士まで、「実際の実務がイメージできて大変参考になった」と大好評を得ました。
2023(令和5)年11月15日、医療問題弁護団主催「症例研究会」を開催しました(報告担当弁護士:中﨑徹人団員、中川裕子団員、司会担当弁護士:飯渕裕団員)。
今回は、「問診義務をあらためて考える」というテーマを設定しました。
臨床の現場では、患者の傷病が何であるかを診断し、これに対して治療を施していきますが、その診断に当たっては、問診が必要不可欠な起点ないし情報源であることと思います。また、問診は、重大な結果を避けるためにも重要な役割を果たします。
症例研究会では、以前、救急医療を題材として問診を扱ったことがありましたが、今回、あらためて、家族等補助者に対する問診や、問診困難者(意識不明、高齢又は若年、精神疾患者等)への対応、器官別の視点も交えて、この「問診」について、弁護士からの裁判例の報告をはじめ、参加者の経験を踏まえた意見交換を行いました。
「症例研究会」は、医療問題弁護団の弁護士と、医療従事者(医師、薬剤師、看護師)、医療事故被害者、法律学者など、医療と医療事故に関係する多様な職種の方々にご参加いただき、毎回設定した題材に沿った裁判例報告や医学講演などを踏まえて自由闊達な議論を交わすことにより、相互理解・相互交流ひいては医療安全の向上を目的として開催しています。
今後も定期的に開催し研鑽を積んでいきたいと思います。
公正な医療事故調査制度の確立を求めて チラシ配布・署名活動を次の日時・場所で行いました。
<第142弾>2023年11月12日(日)16:00~17:00
場所 JR山手線目白駅 改札前
2023(令和5)年9月6日、医療問題弁護団の医療研修「がん医療におけるエビデンス不明の医療の実態」を受けました。
私も、以前、とある「免疫細胞療法」に関してご相談を受けたことがあったため、現在の医学的知見の到達点を勉強したいと思い、参加しました。
講師の勝俣先生によれば、2000年代頃には免疫細胞療法を大学病院などでも積極的に研究されていたようですが、結局、どの研究も効果がなく失敗に終わり、有効性を確認することはできなかったとのことでした。以前は最先端の研究だったのかもしれませんが、今やエビデンスのない治療行為と位置づけられているのは驚きでした。
と言いますのも、私が患者さんのご遺族からご相談を受けた際、医学文献を調べると、複数の医学文献で一定の効果があるように論じられていたからです。私はそれらの論文をみて、「まだ研究途上だが、一定の効果はあるものなのかな」と考えていました。
今回の研修で、私の理解が誤っていたことを猛省しました。
勝俣先生のご説明をお聞きして、美容外科被害と構造が似ているところがあるなと感じました。
例えば、一部の美容外科でも、エビデンスがないにもかかわらず、あたかも科学的な根拠があるように宣伝しているケースを見かけます。また、自由診療で行われるため、治療費が高額になりやすいという点でも共通しています。
他方で、免疫細胞療法は、一時期、大学病院等でも研究がなされていたため、一定数の医学文献があるという点は美容外科のケースとは異なります。美容外科のケースでは、そもそも根拠となるような医学文献が何ら見当たらないというケースも見られますが、免疫細胞療法では研究されていた当時の医学文献があるという点が異なります。
訴訟になった場合、エビデンスのない美容外科の場合、根拠となる医学文献が医療機関側から何ら提出されず、エビデンスがないことが訴訟上も明白になるということがあります。
しかし、免疫細胞療法については、一時期、大学病院でも研究されていたということもあり、医学文献が一定数存在しますので、上記の美容外科ほど簡単ではありません。エビデンスレベルに違いがあるとはいえ、一応の医学文献があるということは、「エビデンスがない」ということを立証しきる一つのハードルになってくるのではないかと思いました。
講師の小谷先生の裁判例分析でも、非標準療法を実施する適否に裁判所は踏み込まないと報告されていました。医師の裁量がその理由です。これは上記のとおり、一定の文献が存在しているということが立証のハードルとなり、裁判所もはっきり「エビデンスがない」と断定できず、一応のエビデンスがある以上は医師の裁量の範疇だと考えやすいのかもしれません。
療法選択の適否が問題となった裁判例では「到底病気の治療とは認められない方法を実施するというような診療契約の締結自体が公序良俗違反と認められる場合」でないと、医療水準に照らして独特な治療法というだけでは医師の責任を問えないとし、非標準療法を実施したこと自体の責任は否定しています。
研修の最後に、勝俣先生は、「医学会には自浄作用がないから、司法界のサポートが必要」とおっしゃられていました。
単に説明義務違反で勝訴したとしても、おそらく各クリニックが説明書面を改定するなどして乗り切られてしまうでしょうから、根本的な解決は図れない可能性が高いです。こうしたエビデンス不明のがん医療をなくしていくには、裁判所に「エビデンスがない非標準療法を実施したこと自体に責任がある」という判決を出させる必要があるのだろうと思いました。
エビデンス不明ながん医療の相談をまた受ける機会があれば、そのときは今回の研修を参考に上記の視点をもって臨んでみたいと思います。
以 上