法テラスを利用した費用の立て替えを希望される方へ

「調査受任」の法テラスご利用に応じられなくなったことのお知らせ

 医療事件においては、相談を受けた後、直ちに損害賠償請求事件として受任することはせず、ご相談者(ご依頼者)の委任を受け、医療機関側の法的責任を判定するための調査を行います。

 かかる調査受任につき、経済的に困難な事情のある方については、これまでは日本司法支援センター(法テラス)東京事務所から受任予定弁護士への委嘱による調査に要する費用が法テラスの基準内で支出されていたので、当該費用の範囲内でご依頼者に費用負担をお願いすることなく調査受任活動をすることができていました。

 ところが、今般、法テラス東京事務所が、医療事件の調査受任において受任予定弁護士に上記費用の支出をしていた従前の取扱は誤りであり、調査をする場合には、「損害賠償請求事件」の受任として法テラスの援助を受けることが適当であるとの見解を示しました。

 しかし、当弁護団は、医療過誤疑いの事件について「調査受任」を経ず、責任追及の可能性があるか分からない段階で損害賠償請求事件として受任することは不適切であると考えております。
 また、委任契約の実態は調査受任であるのに、法テラス東京事務所の見解のとおり、はじめから「損害賠償請求事件」の件名で受任しして法テラスの援助を受けると、調査活動を経た後に、責任追及が困難であると判断して損害賠償請求を断念するに至った場合には、弁護士は、調査のために費用を支出し実働しても、「損害賠償請求事件」の件名で援助された費用を、法テラスに返還しなければならないことになります。

 なお、「証拠保全事件」では、法テラスより一定の援助を受けることが制度上可能です。
 しかし、医療事件の調査活動において、カルテ開示制度が進んだ今日では証拠保全を行うことが通常とは認めがたいこと、証拠保全を行うことだけでは調査活動を全うできないこと、この場合に援助される費用は証拠保全手続のみに対するもので調査全体の費用ではないことから、「証拠保全事件」として受任することは医療事件の調査受任に対する援助の制度としては実情に合わないものと判断しております。

 以上のとおり、今般、法テラス東京事務所の見解が示されたことにより、医療事件の調査受任において援助を受けられる適当な制度が法テラスに用意されていないことが明確になり、他方、調査受任を経ずに「損害賠償請求事件」として法テラスをご利用いただくことも、適当とは考えられません。
 したがって、当弁護団では、残念ながら、医療事件での調査受任について法テラスをご利用いただくことには応じられないという結論に至りました。
 団員にも当弁護団がこのような考えであることを周知しております。

 以上の点、ご理解くださいますようお願い申し上げます。

 なお、経済的に困難な事情のある方におかれましては、相談申込み後に個別に担当弁護士にご相談ください。

以 上

カルテ事情の今昔(飯塚 知行)

 過日、医療問題弁護団の「症例検討会」でカルテ(ここでは診療録を含む医療記録全体)に纏わる話がテーマになりました。

 医療事故を患者側で担当する弁護士にとって、カルテ読みと医学文献検索は、事案取組みの第一歩であり、これなくして事案解決へのゴールは見えません。
 また、「カルテ読み」は、大きく、「字面を読む作業」と「行間を読む作業」に分かれます。そこで、今回は、この内「カルテの字面を読む作業」について少し書いてみたいと思います。

 現在、世の中は電子カルテ全盛の時代に入りましたが、私が医療事故に関わる仕事に首を突っ込んだ時代は、当然ながら、カルテは手書きでした。
 当時、カルテを記載するドクターには、とても「達筆」な方が多く、各科(時にはドクターご本人)に独特な略語が多用され、そして、ドイツ語の医学用語もカルテ上で踊っていました。
 つまり、一筋縄では読めない。私どもの仕事はカルテの解読から始まりました。当時は簡単にネット検索という時代でもなく、医学用語辞典等を片手に、時に診療経過や前後の文脈から推測し、さらには協力医の見解を仰ぎと、悪戦苦闘しました。
 過日の症例検討会で、あるドクターから、その方より昔のドクター達のなかには敢えて第三者からは分かりづらくするためにドイツ語や独自の略語を使われていた方もいたという話を伺いました。さもありなんですが、カルテによる医療従事者間、或いは、医師と患者の間の情報共有を目指すという現在の状況(多くの場合はそうであると信じています。)を考えると隔世の感があります。この点については、機会があれば、「カルテは誰のもの」という視点で改めて考えてみたいと思います。

 何れにしても、電子カルテが普及したことで、患者側代理人弁護士にとって最も有り難かったのは、カルテの「字面を読む」苦行から解放されたことかもしれません。
 電子カルテになって、カルテの解読は、ほぼ不要になりました。また、副次的にカルテの改竄やカルテ隠しのリスクも格段に減りました。そうして、患者側のカルテの取得(確保)の方法も、「証拠保全」主流から「カルテ開示請求」主流へと移っていきました。
 他方、電子カルテ化されたことにより、カルテ上に、ある意味で無駄な情報が多くなり、また、本当に必要な情報が埋没したり、抜け落ちていたりすることも多くなったのかなと感じることもあります。
 電子カルテは、今は未だキーボードを叩いて入力することが普通ですので(音声入力が進歩すると医療従事者の使い勝手も上がると思うのですが)、カルテの記載内容に、コピー&ペーストが多くなるようです。ただ、これは手間の問題だけでなく、当該医療従事者の能力の問題であることも多いのではないか、と指摘する意見も耳にします。

 ところで、先日、弊事務所で担当している事案の「カルテ開示請求」で大部のカルテが届きました。但し、PDF化されCD-ROMに保存されて来ました。比較的珍しいパターンかなと思います。
 まず、やや老体は、PC画面を追うのは辛いので、紙ベースにして読み始めましたが、事務所の同僚のK弁護士から、「PDFの検索機能を使うと便利なことがありますよ」と、言われ、「そうか、そうだな」と、どこぞから鱗が落ち、それ以来、「Ctrl F」は魔法の呪文となっています。勿論、まずカルテ全体を俯瞰しながら読みますが、個々の事案を考えるに当たっては当然気になる「key word」がありますので、検索機能によって、それを追いかけられるということは、見落としを減らし、時間を節約する上でも、とても有効です。但し、当該事件について、きちんと理解し、適切な「key word」を抑えられていることが前提となりますが。
 今後、このような形での「カルテ開示」が増えれば、患者側代理人弁護士にとっても、医療側代理人弁護士にとっても、事案の理解を共有するという意味で有益だなと思う次第です。

 さて、紙面ではなく体力(根気)が尽きましたので、「カルテの字面を読む作業」はこの程度にしたいと思いますが、また、機会を頂ければ、「カルテの行間を読む作業」や「カルテは誰のもの」という視点で書いてみたいと思います。

 to be continued??

12月11日(日)15:00~16:00 署名活動を大崎駅 南口改札新東口で行いました

公正な医療事故調査制度の確立を求めて チラシ配布・署名活動を 次の日時・場所で,行いました。
<第133弾>2022年12月11日(日)15:00~16:00
場所 JR山手線 大崎駅 南口改札新東口

「解決事件報告会-包茎手術被害対策弁護団の結成から事件解決まで-」が開催されました

 2016年6月23日、国民生活センターが「美容医療サービスにみる包茎手術の問題点」として記者発表を行ないました。
 上記同年6月26日、医療問題弁護団の有志でホットラインを実施し、多くの相談が寄せられたことを契機として、医療問題弁護団を母体とする包茎手術被害対策弁護団を結成し、調査受任・訴訟提起・国民生活センターへのADR申立て等を行ないました。
 2022年10月、受任した4件の事件(訴訟上の和解による解決2件、国民生活センターによる和解2件)が全て終了したことを踏まえ、同年12月9日、【医学的問題点】【法的問題点】【採り得る手段】などを中心テーマとした解決事件報告会を開催しました。
 
 詳細な事件の報告(4件中の3件)は以下の報告もご覧ください。

① 平成31年3月に和解が成立した事件
 (2020.09.07包茎手術被害に関する損害賠償訴訟 和解解決の報告
② 令和2年12月に和解が成立した事件
 (2021.01.12包茎手術被害に関する損害賠償訴訟 和解解決の報告
③ 令和3年4月に国民生活センターによる和解が成立した事件
 (2021.10.25包茎手術被害に関する損害賠償訴訟 和解解決の報告